モラハラと精神疾患・発達特性との関係とは?加害行動の背景から両者の関係を解説
COBEYA編集部
2025.8.16更新
モラルハラスメント(モラハラ)は、家庭や恋人関係、職場など、あらゆる人間関係で起こり得ます。近年では、精神疾患やアダルトチルドレンなどの特性が関わっているケースも注目されています。しかし、診断名があるからといって必ずモラハラを行うわけではありません。本記事では、こうした疾患・発達特性とモラハラの関係を、第三者的視点で解説します。
モラハラとは何か
モラハラとは、暴力や脅迫のような直接的な行為ではなく、言葉や態度によって相手を精神的に追い詰める行為を指します。家庭や恋人関係、職場など、信頼関係が前提となる場で起こりやすいのが特徴です。
具体的な例としては、無視、侮辱、皮肉、過剰な批判、必要以上の監視、感情を逆なでする発言などが挙げられます。こうした行為が繰り返されると、被害者は自己肯定感を失い、判断力や意欲が低下していきます。長期化すれば、抑うつ症状や不安障害、不眠症、カサンドラ症候群(特に発達障害のパートナーを持つ人に多く見られるストレス反応)など、心身に深刻な影響が及ぶことも少なくありません。
モラハラ加害行動と疾患・発達的特性との関係
モラハラ行為者が全員、特定の診断名や発達特性を持っているわけではありません。しかし、心理学や精神医学の分野では、いくつかの特性がモラハラ行動と関連しやすいケースがあると指摘されています。ここでは、あくまで一般的な知見として解説します。
自己愛性パーソナリティ障害(NPD)を有する人は、自分を特別視し、高く評価されることを強く求めます。そのため、批判や否定に非常に敏感で、自己防衛として攻撃的な態度に出ることがあります。
モラハラとして表れる場合、相手を過小評価する発言、人格を否定するような態度、自分の非を認めない行動などが目立ちます。
境界性パーソナリティ障害(BPD)を有する人は、感情の起伏が激しく、対人関係が不安定になりやすい特徴があります。見捨てられることへの強い恐怖から、相手を強く引き寄せたり、突き放したりする行動が繰り返されることもあります。この感情の揺れが、モラハラ的な発言や行動として表れる場合があります。
双極性障害を有する人には、躁状態と抑うつ状態が周期的に現れます。躁状態のときは気分が高揚し、衝動的・攻撃的な発言や行動が出ることがあり、これがモラハラと受け取られることもあります。一方、抑うつ期には自己否定や無気力が強く出て、関係が停滞する原因にもなります。
強迫性障害を有する人は、「物事を正しく行わなければならない」という強いこだわりを持つことがあります。家庭内でそのこだわりをパートナーにも押し付ける形になると、相手は監視されているように感じ、モラハラと認識することがあります。
ASDの傾向を持つ人は、非言語的なコミュニケーションや相手の感情を読み取ることが苦手な場合があります。その結果、意図せず冷たい言い方になったり、相手を無視しているように見えたりすることがあります。これが繰り返されると、受け手はモラハラだと感じることがあります。
ADHDの傾向がある人は、衝動的な発言や行動、忘れ物や段取りの苦手さなどが特徴です。これら自体はモラハラではありませんが、パートナーが「無責任」「配慮がない」と感じやすく、衝突のきっかけになることがあります。また、本人がストレス下で攻撃的になると、モラハラ的なやりとりに発展することもあります。
幼少期の養育環境やトラウマが原因で、人間関係に過度な不安や回避傾向を持つ愛着障害。相手を強くコントロールしようとする行動や、距離を置きすぎる行動が、モラハラ的に映る場合があります。
アルコール依存症の親がいる家庭など、機能不全家族のもとで育った経験を持つアダルトチルドレンは、人間関係で「支配—被支配」のパターンを無意識に繰り返すことがあります。そのため、過去の経験がモラハラ的な振る舞いとして現れることもあります。
「診断名(傾向)=モラハラ」ではない
ここまで様々な特性とモラハラとの関係を挙げましたが、精神疾患や傾向があるからといって、必ずモラハラをするわけではありません。モラハラはあくまで「行動のパターン」として捉えるべきもので、診断名を根拠に人を断定することはできません。また、加害行動が見られる背景には、性格、環境、ストレス、関係性の歴史など、複数の要因が絡み合っています。
被害者が感じやすい心理状態と影響
モラハラを受け続けると、被害者は次のような心理状態に陥りやすくなります。
- 自己否定感の増大
- 判断力や思考力の低下
- 他者への不信感
- 孤立感・孤独感
- カサンドラ症候群(特に発達障害があるパートナーとの関係で多い)
カサンドラ症候群は、理解してもらえない関係性の中で孤立し、心身の健康を害する状態です。うつ病や不安障害を併発するケースもあります。
モラハラへの対応・回復のためのステップ
モラハラと感じた出来事を日付・内容・状況とともに記録することで、自分の受けている影響を客観的に把握できます。
家族や友人、専門家(カウンセラー、弁護士、配偶者暴力相談支援センターなど)に早期相談することが重要です。
受け入れられない言動や行動について、明確な線引きをすることが、自分を守る第一歩です。
身体的・精神的危害のリスクがある場合は、速やかに安全な場所に避難し、警察や支援機関に連絡を取りましょう。
心理的なダメージからの回復には、カウンセリングや心理療法が有効です。必要に応じて医療機関での診断や、カウンセラーなどの専門家による支援を受けましょう。
まとめ
モラハラは、相手を精神的に追い詰める行為であり、その背景には様々な要因が絡み合っています。自己愛性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害、ADHD、ASD、愛着障害、アダルトチルドレンなど、疾患・発達特性と関連するケースもありますが、診断名だけで行動を決めつけることはできません。
重要なのは、問題行動があるかどうか、そしてそれにどう対応するかです。関係性に悩んでいる場合は、一人で抱え込まず、信頼できる第三者や専門機関に相談することが、回復への第一歩となります。
