オンラインカップルセラピーのメリット・デメリット・効果
2024.3.5更新
対面カウンセリングと比較して、オンラインでカップルセラピーを受けるメリットはどのようなところにあるのでしょうか?その効果や、考えられるリスクと合わせて整理します。
オンラインのカップルセラピーでも効果はある?
カウンセリングの効果については、十分に機能するという結論が出ています。Front. Psychol.の研究によると、調査に参加した多くのカップルがオンラインで行われるカップルセラピーに関して対面と同様またはそれを上回る肯定的な反応を示しています。
メッセージやメールでのカウンセリングもその有効性が確認されていますが、研究はうつや不安症など特定の症状における1対1のセラピーの場合に限定されています。カップルセラピーでは情報量が膨大になったり非言語情報にパートナーとの関係性のシグナルが表出したりする場合が多々あるため、基本的にはビデオ通話によるセラピーを受けた方が良いでしょう。
オンラインカップルセラピーのメリット
さらにここからは、オンラインカップルセラピーならではの利点を、オンラインセラピー全般のメリットと合わせて挙げていきます。
- アクセスのしやすさ:カップルセラピーを実施する機関は、まだそれほど多くはありません。お住まいの地域に専門家がいなくても、オンラインであればセラピーを受けることができます。またカウンセリングルームに通うところを、誰かに見られる心配もありません。また遠距離や別居の事情があるカップルの場合、オンラインカップルセラピーでは、パートナーがそれぞれ望む場所からセラピーにアクセスすることができます。
- 費用:セラピーの長さ、カウンセラーの技量などの面での差がないとき、多くの場合オンラインセラピーは対面セラピーよりも安価です。これはカウンセリングルームのような、物理的なコストが不要になるためです。
- 時間の柔軟性:カップルや夫婦がお互いの都合を合わせてセラピーに臨むことは、個人でカウンセリングを受けるよりも簡単ではありません。オンラインのカップルセラピーであれば、夜遅い時間や、土日のセラピーにも対応しています。またセラピーの前後には移動の必要がなく、直ちに日常生活に戻ることができます。
- カウンセラーの選択肢:多くの場合、対面カウンセリングではカウンセラーの選択肢は多く設けられていません。そのため、カウンセラーとの相性が悪いと感じた場合にはまたカウンセリングルームを探し直す必要があります。プラットフォーム化されたオンラインカップルセラピーの場合、カウンセラーは複数在籍しています。現在の担当カウンセラーに直接告げることなく、より相性の良いカウンセラーのセラピーを受けることが可能です。
- 快適な空間:対面カウンセリングでは、一般的にカウンセリングを実施する環境として適切な空間レイアウトがされています。しかし快適な空間は、個々によって微妙に異なります。オンラインセラピーでは、クライアント自らが快適だと感じる空間(例えば、使い慣れているソファ・好きな香り・照明の明るさ)を自ら設定することができます。それらはカウンセリングへの緊張感を和らげる助けにもなります。
- カウンセラーとの距離:対面カウンセリングは、カウンセラーとクライアントが密室の空間で行います。カウンセラーとの信頼関係がまだ十分でない場合、このような環境はクライアントにとって威圧的に感じる場合があります。反面、オンラインセラピーではカウンセラーとクライアントには一定の物理的な距離があります。
カップルセラピーの流れ
カップルセラピーのアプローチ方法はいくつか存在しますが、一般的には、カウンセラーは次の段階を通して関係の改善を試みます。
- 問題(例えば親密性、嫉妬、トラウマ、性的困難性)を特定する
- セラピーの目標を設定する
- 個々人の問題としてではなく、パートナーとの関係性のあり方に焦点を当てたセラピーを行う
通常、カップルセラピーの初期のセッションでは、各パートナーの過去や内面、例えば家族構成、価値観、文化的背景などについて掘り下げます。またパートナー間の出来事に対し、一方がどのような感情を抱いているかなどに注目します。
その後、カウンセラーは、パートナー間で焦点となっている問題を特定し、セラピーの目標を設定し、各セッションを通して関係改善のためのアプローチを実施していきます。セラピーを通して、カップルはお互いの関係性のパターンについての深い理解、効果的なコミュニケーションの方法、問題を解決するために必要なスキルを身につけていきます。
カウンセラーは必要に応じ、セッションの最中や事後に宿題を割り当てて、セラピーで学んだことを日常生活に応用してもらうよう計らいます。
オンラインカップルセラピーのデメリット
オンラインカップルセラピーには多くのメリットがある一方で、デメリットについても考えなくてはなりません。中には重大なリスクを含むものもあるので、正しく把握しておきましょう。
- 環境の整備:対面カウンセリングでは通常用意されているようなセラピー環境を、クライアントは自ら整えなければいけません。例えばセラピー中に会話が外部に聞こえてしまったり、セラピーを中断せざるを得ないような障害(例えば、ドアのノック・屋外の騒音・ペットの侵入・インターネットの接続問題)が発生したりしないよう、クライアントは調整する必要があります。またオンライン上での予約システムの取り扱いや決済にも慣れておくことが望ましいでしょう。
- 距離感の調整:オンラインが作り出す独特の距離は、クライアントが遮断されたような気分を味わう可能性があります。対面カウンセリングでは、お互いの空間的距離・姿勢や体の方向を容易に調整することができます。それはクライアントにとっては、一種の安心感や信頼感に繋がる可能性があります。
- 非言語情報の欠如:これは一部のカウンセラーに影響します。オンラインセラピーではクライアントとカウンセラーの身体は画面によって切り取られ、クライアントの完全な状態を把握することが難しくなります。そのため、言葉や視線の変化では読み取れなかったわずかな感情の揺れが画面外に現れたとき、カウンセラーがそのシグナルを見落としてしまう可能性があります。またカップルセラピーにおいては、パートナーとの関係性やコミュニケーションのパターンを理解することも必要になってきます。パートナーである二人が一つの画面上にいないとき、不慣れなカウンセラーにとってはコミュニケーションの流れを読み解くことが難しくなる場合があります。
- 介入の困難性 :セラピーは二人にとって大変センシティブな問題について扱います。そのため、セラピーの最中にDVが発生することがごく稀にあります。対面カウンセリングでは、カウンセラーがその場で介入し暴力を制止することができますが、オンラインではそれができません。
またパートナーのどちらかに重いうつ病や精神疾患がある場合も、セラピー中にそれらが悪化する可能性があります。そういった場合にも、オンラインではカウンセラーが素早く状況を察して介入できないデメリットがあります。また対面・オンラインに関わらずそういったクライアントは、医療機関での治療と主治医による外部のカウンセリングを受けることへの許可が必要です。
DVが日常的になっている、もしくはその恐れが強い場合や、主治医の許可はあるものの重い精神疾患を抱えている場合は、できるだけ対面カウンセリングを選択しましょう。
メリットとデメリットを確認した上で判断を
オンラインでのセラピーはカップルセラピーの経験がない人にとっても、取り組みやすいものだと言えます。しかしオンラインカップルセラピーを選択する場合は、必ず上記に挙げたようなリスクが低く、デメリットについても理解しておく必要があります。
対面・オンラインいずれの場合もカップルセラピーを受ける際には料金や回数の目安(あるいはそれについてカウンセラーがどう考えているか)などを事前に確認した上で、ご自身の状況や好みからセラピーの形態を選択してください。