発達障害とは?その種類と特性がパートナーシップに与える影響
2024.3.5更新
発達障害の特性によっては、パートナーシップをはじめとした人間関係に影響を及ぼすことがあります。本人とパートナーは、どのようなことに気をつければ良いのでしょうか。
発達障害とは
発達障害は、神経発達症とも呼ばれ、脳機能の発達の仕方の違いにより、社会生活に影響を及ぼす障害です。特に対人関係を築く際のコミュニケーションや学習面において、これらの障害が大きく作用することがあります。発達障害の原因は必ずしもはっきりとはわかっていませんが、遺伝または胎児のときに母体で受けた刺激などによって引き起こされるとされています。
発達障害にはいくつかの種類があり、それぞれの具体的な症状や特徴は多岐にわたります。一般的な発達障害の例としては、以下のようなものがあります。
- 自閉スペクトラム症(ASD):身振り手振りや視線・表情を読み取ったり、自分や相手の感情を察知したり伝えることを苦手とする障害です。また反復行動や特定の人・もの・出来事に強い関心を持つことや、匂いや音などの刺激に強く反応する感覚過敏を伴うことがあります。
- 注意欠如・多動症(ADHD):不注意・多動性・衝動性の3つを特徴とする障害です。例えば、忘れ物が多い(不注意)、時間管理が苦手(不注意)、年齢の割に落ち着きがない(多動性)、思ったことをすぐ口に出したり行動したりしてしまう(衝動性)といった症状が現れます。
- 学習障害(LD):知的発達に遅れがないものの、読み書きや計算能力に困難が生じる障害です。単語などの識別を困難とする読字障害(ディスレクシア)、文字を書くことを困難とする書字障害(ディスグラフィア)、計算や推論を困難とする算数障害(ディスカリキュリア)があります。
- チック:瞬きや咳払いなどの動きが、本人の意思によらず突然現れ、繰り返し生じてしまう障害です。
- 吃音:話すときに言葉が滑らかに出てこない、どもるなどの症状が出る障害です。
発達障害と恋愛
発達障害のある人が、恋愛やパートナーシップに向いていないということはありません。しかしながら、持っている障害の種類や環境によっては、特性がパートナーシップに影響することもあります。
自閉症スペクトラム(ASD)の人の例を挙げてみます。彼らの中には、言語的および非言語的なコミュニケーションを苦手とする人がいます。すなわち、自分のニーズや欲求を表現したり、相手の立場を理解・共感したりすることが困難な場合があるのです。具体的には、自身の発言や行動によってパートナーが動揺したり怒ったりしているのに、それに気づかない。あるいは、パートナーの質問や発言に対する適切な反応ができない。自分自身の感情の理解や表現を苦手とするために、パートナーと適切なコミュニケーションが取れないといったことが起こります。
コミュニケーションの齟齬が繰り返されると、パートナーは「自分は愛されていない」「自分は相手にとってどうでもいい存在なのだ」といった感覚に陥ることがあります。こういった感覚が不安障害や抑うつ状態などを引き起こすと、カサンドラ症候群と呼ばれる状態になります。
またパートナーとの不和は、発達障害を持つ人自身にも、二次障害を引き起こす可能性があります。本人に悪気はないのにパートナーが傷ついているのを見たり、そのことをパートナーや第三者から責められることによって、自信を失ったり、体の痛みや食欲不振などの身体症状が現れたり、暴言や暴力、自傷行為などを招く可能性があります。
このような状態になってしまった場合には、自分たちだけでなんとかしようとするのではなく、専門家の力を借りてください。医師とカウンセラーのどちらに相談すべきかわからないときには、まずは信頼できてアクセスしやすい方に相談し、今後の対応の仕方について一緒に検討してもらいましょう。
発達障害がある人と良いパートナーシップを築くために
発達障害、特に自閉症スペクトラム(ASD)を持つ人と良い関係を築くには、特性への理解と、本人にとって効果的な方法でコミュニケーションをとり、つながりを持とうとする姿勢が必要です。以下に、参考になるヒントをいくつか挙げておきます。
- 特性を理解する:ASDの人たちは、そうでない人たちが慣れ親しんでいるものとは違ったコミュニケーションや関わり方をするかもしれません。違ったコミュニケーションを取ることが、愛情や思いやりのなさを表しているわけではありません。誰もが自分自身を表現する独自の方法を持っていることを忘れないようにしましょう。
- 率直で簡潔なコミュニケーションをとる:どんな関係でもオープンで正直であることが大切ですが、ASDの人とのコミュニケーションでは特にそれを心がけてください。「これくらいわかってくれるはず」とは思わずに、コミュニケーションをとるときは、はっきりと直接的に、シンプルでわかりやすい言葉を使うように心がけましょう。適切なコミュニケーションの取り方がわからない場合には、カップルセラピストがその方法を指南します。
- 無理をしない:ASDのパートナーに合わせすぎている、自分らしくいられないと感じてしまったときには、率直にそのことをパートナーに伝えたり、落ち着きを取り戻すために休息を取ったりしましょう。また二人のコミュニケーションを助けたり、自分と同じ立場で共感してくれたりするような外部のサポーターに力を貸してもらうことも大切です。
最も重要なのは、誰しもに個性があり、それぞれのニーズや好みがあることを覚えておくことです。ある人にはうまくいく方法も、別の人にはうまくいかないことがあります。発達障害のある本人とパートナーは障害の特性を理解しつつ、お互いに個性を持った人間として尊重し合う姿勢を忘れないでください。