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家族療法やブリーフセラピーとは?カップルセラピーに用いられる心理療法について解説

2024.3.5更新

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カップルセラピーをインターネットで検索してみると、時々、「家族療法」や「ブリーフセラピー」といった単語が出てきます。あまり聞き慣れない言葉だと思いますので、ここではその概要をご説明できればと思います。「家族療法/ブリーフセラピーって何?」、そして「カップルセラピーってどんなことをするのだろう?」といった疑問に対して、この記事が少しでもご参考になりましたら幸いです。

家族療法とは?

家族療法は、1950年代から60年代にかけて、アメリカの精神科医ミルトン・エリクソンの臨床や、文化人類学者グレゴリー・ベイトソンらのコミュニケーション研究をもとに生まれた心理療法です。一般的な心理療法では、思考のくせや過去からの葛藤など、個人の内界に焦点を当てることが多いですが、家族療法では問題の原因や責任を個人に求めず、周囲とのコミュニケーション(関係性)の変化を通じて、問題の解決を目指します。
構造派、戦略派など、さまざまな流派があるのですが、人の集まりをひとつのシステムと捉え、カップルのコミュニケーションはもとより、家族および義家族との関係性、仕事(職場)との兼ね合いなど、さまざまな階層のシステムがどう絡み合っているかを複合的に見立てるため、現在の日本ではシステムズアプローチとも呼ばれています。そうした性質上、カップルなどの複数人合同のセラピーもそうですし、ご本人不在でパートナーやご家族のみで来談された際のセラピーやコンサルテーション(例えば、不和により、パートナーが同席してくれないような状況)も得意とします。

ブリーフセラピーとは?

ブリーフセラピーも、源流はエリクソンの臨床や家族療法であり、アメリカのMRI(Mental Reserch Institute)という機関で開発が進められてきました。MRIアプローチとよばれるこの実践では、個々人のうまくいっていない解決行動(偽解決)の連鎖の中で問題は維持されると考え、さまざまな場面に共通するコミュニケーションパターンの変化を目指します。また、1980年代以降、スティーブ・ド・シェイザーやインスー・キム・バーグによって、解決志向ブリーフセラピーという技法も発展していきます。そこでは、解決構築という考え方を採用し、個人やカップルが問題に囚われず、少しでもうまくやれている場面やしんどさがマシな場面、そのときの解決努力やコミュニケーション(すなわち、問題の例外)を一緒に探し、その良循環を強化していきます。
このように、ブリーフセラピーは、家族療法といわば親子のような関係性ではありますが、問題解決や解決構築のための質問や介入の技法群が特徴的で、短期間での(ブリーフな)悪循環の切断、良循環の拡張を目指していきます。

家族療法/ブリーフセラピーが目指すところ

家族療法とブリーフセラピーに共通する特徴として、原因探しや悪者探しをしないことに加えて、特定の方法や正解にこだわらず「あれもこれも」の精神を大切にする、オーダーメイド性が挙げられます。例えば、不眠という症状へのアプローチのひとつとして、日中の運動を増やす、カフェインの摂取を減らす、布団でスマホを見ない等、睡眠衛生の改善がありますよね。間違いなく、誰がみても常識的なアプローチであり、まずは誰もがそのセオリーを試しますし、それで問題が解決していくのであれば何の問題もありません。これはカップルなどの対人関係の困りごとにおいても同様に言えることです。
しかしながら、対人関係の困りごと、特にカップルの困りごとには、さまざまな要因が絡み合っています。タオルの畳み方ひとつとっても、違う文化で育ってきた他人同士の二人の価値観ややり方があります。家族、義家族との関係性も関わってきます。それぞれの家事育児や仕事のストレスなども精神状態や感情コントロールに関わってきます。その中で、セラピスト側もひとつの解決策(偽解決)にこだわってしまうと、その内容がいかに常識的でも、袋小路に入ってしまうのはイメージしていただけるかと思います。
家族療法やブリーフセラピーでは、上述の通り、さまざまなシステムやその中でのコミュニケーションを扱うため、変わりやすい、あるいはご相談者さまが取り組みやすい切り口を、セラピーの中で「あれもこれも」と話し合い、一緒に探していくことが可能です。

架空事例の検討

妻のA子さんは30代で、パートで働きながら、小さいお子さんの育児や家事を日々頑張っています。夫で同い年のB夫さんも、家事育児をまったく手伝っていないわけではないのですが、働き盛りかつ飲み会もあり、帰宅が遅く、休日も昼前までゆっくり寝てしまうことがしばしば。A子さんは「もっと色々気づいて手伝ってよ!」「私の苦労を全然わかってない!」とつい感情的に叱責してしまいます。それに対してB夫さんも、「ゴミ捨て等の当番はしてる!」「なのに感情的に言われて、どうしたらいいんだ!」と反論し、口論がエスカレートしてしまいます。最近は週に何回も口論になり、普段からふたりの雰囲気は険悪になりがちです。家事育児やお仕事、夫婦の不和、近所に住む義理の親との付き合いのストレスも重なり、A子さんはノイローゼぎみになってしまい、B夫さんも同席で、COBEYAの初回セラピーを利用することにしました。

家族療法/ブリーフセラピー観点からの事例解説

皆さんは、このカップルの問題は何が原因/誰が悪いと考えますか?A子さんの家事負担やしんどさに対するB夫さんへの無理解、コミットメントの不足と捉えることもできるかもしれません。あるいは、B夫さんに対してA子さんが感情的に反応してしまうことおよび感情コントロールが問題と捉えることもできるかもしれません。それらはどれも間違いというわけではなく、状況やニーズに応じて、そういった着眼点でセラピーを進めていくこともあります。しかし、上述の通り、家族療法では、あくまで特定の個人を悪者にしたりせず、そして「あれもこれも」で切り口を考え、解決策を一緒に考えていきます。
例えば、いくつかの口論の場面に共通するコミュニケーションパターンを見出し、A子さんの指摘の仕方や、B夫さんの指摘の受け止め方を扱っていくこともできるでしょう。また、家事育児の分担に関して、セラピストという中立的な第三者が立ち会った状況で、図表化もしながら、改めてコンセンサスを作り直すことで、B夫さん納得のうえでコミットメントを増やしたり、A子さんの不満を減らしたりすることができるかもしれません。二人でゆっくりと喋ったりお出かけしたりするクオリティタイムが少なく、そのことが険悪なコミュニケーションの一因になっていそうであれば、週1回からでもそうした時間を増やしていくことも一手でしょう。あるいは、A子さんが義理の親との付き合いや干渉もストレスになっていれば、B夫さんに間に入ってもらい、盾になってもらうことで、A子さんのストレスが減るだけでなく、カップルの信頼関係も強化されていくかもしれません。もしくは、口論がエスカレートせずに済んだ場面(問題の例外)を探していくことで、上記以外の切り口がフッと出てくることもあります。
このように、A子さんやB夫さんのパーソナリティや性格を問題視したり、それを正そうとしたりしなくても、結果的に問題が解決していくことはありえることなのです。これまでの経緯や苦労、解決努力を丁寧にお聴きしながら、さまざまなシステムやコミュニケーションから切り口を探す、あるいは、既にある解決の種を見つけて、育てていく。家族療法やブリーフセラピーは、セオリーがうまくハマらないときや、状況が入り組んでいて複雑であるときこそより効果を発揮する、そんなフレキシブルさを有しています。

解説まとめ

ここまでお読みいただいて、家族療法やブリーフセラピーについて、少しでも具体的にイメージをしていただけましたでしょうか?繰り返しになりますが、常識やセオリーに囚われず、原因や正解にもこだわらず、ご相談にきてくださる方々にとって役に立つ解決策、小さく具体的な一歩を一緒に探していく点が家族療法やブリーフセラピーの特徴といえます。また、個人内界を扱うセラピーにももちろん意義はあるのですが、カップルというシステムおよびコミュニケーションを直接的に扱い、必要に応じてホームワークにも取り組んでいただくという性質上、カップルセラピーにマッチした心理療法といえます。

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